格安ツアーで有名な旅行会社が破産申請した。
夕方のニュースで「どうして破産したのでしょう」との愚門を吐いたアナウンサー。
わたしは「格安だから」と独り言。
以前、わたしもインバウンドツアー(海外からの旅行者を対象とした日本国内ツアー)の仕事に携わっていた。大型バスのドライバー兼添乗員として韓国・中国・台湾からの旅行者を案内していた。
当時、日本の窓口だったエージェントの資金繰りが悪く、泊まれるホテルが日に日に減っていった。当然、ホテルのランクは落ち、わたし達スタッフへの対応も悪くなる。酷いときは「宿代を払わないとチェックアウトさせない」と人質に取られたと他のドライバーから聞いた。
中国からのツアー専業エージェントに至ってはもっと酷かった。
「採算合うの?」というツアー代金。そんな御一行さまを日本国内に滞在している中国人ガイドが「一人いくら」で買い取るシステムになっていた。わたしが聞いた時は「一人2万円」だった。だからガイドが儲かるためには「闇免税品」を売りつけたり、観光地をオプションと称し「富士山5合目まで行く人は一人5000円」だったりした。この負担を拒んだ人は、麓にある施設に置き去りにする。当然、その施設からのクレームが来るのだが、ガイドはお構いなしである。
日本から海外へ出かけるツアーでも格安が目につく。
旅程をよく見ると、現地到着後すぐに「両替と称して免税店」へ立ち寄る。格安ツアーの利益を確保するために「免税店からのキックバック」を充てるのである。当然、帰国日にも免税店へ立ち寄る。
わたしは、いずれこのビジネスモデルは破綻すると思っていた。
今どき、バスで連れて行かれるような「免税店という名の悪徳土産物屋」で買い物をする「奇特な方」は少ない。元々、格安ツアーに手を出すような旅行者は落とす金も知れている。
今回の大手格安旅行社の被害に遭った方々は気の毒だと思うが、「モノには適価がある」ことを知ってほしい。旅行会社は善人ばかりではない、如何にボったくってやろうかと手ぐすねを引いている業者もある。そんな被害に遭わないためには、もっと道理を知らなければならない。
旅が好きなら、賢い旅行者になって欲しい。
written by Yoshinobu Iriguchi