カード会社に電話して、わたしに成りすました人間が、どこで「買い物」をしたのかが判明した。東京にある大きなパソコンショップ(以下A社)の通販部門だった。ここで18万円を超える決済をしようとしたらしい。

A社に電話してみた。

そこにはわたし名義での購入履歴は無かったが、当該時刻に別名で購入しようとした何者かの記録が残されていた。それがどこに住むどんな奴なのか、送付先はどこなのか、個人情報保護という壁に阻まれてそれ以上の情報を得ることは出来なかった。警察など捜査機関からの「文書による請求」がない限り開示出来ないと言われた。

そこで、カード会社のアドバイスに従って警察に連絡した。電話が刑事課にまわされ知能犯担当の刑事に顛末を説明した。

「今回の被害者はあなたではないです」

わたしは言葉を失った。わたしのカードが身に覚えのないところで使われようとし、その対策で現金の引き出し、カード変更手続きに走り回らされたのにである。唯一、残高不足のおかげで金銭的な被害がなかったのが救いだったが。

「今回の被害者はA社です」

刑法による規定ではそうなるらしい。つまり、わたしに成りすました者がA社から金物を搾取しようとしたとされると。

「現代のネット社会に対応してないんですよね、刑法が」

テレビでよく聞くセリフ、でも、このセリフって随分前から言われてないだろうか。

ならば、現代のネット社会に対応した法律に改正すればいいじゃないか。クダラナイ質疑応答に費やす時間があるなら、もっと有効に「立法業務」に励んでほしい。

「A社が被害届を出さないと捜査に着手出来ない」

今なら、件の成りすまし犯が入力した届け先データがあり、そこから身柄確保だって出来るかもしれないのに。これ以上被害者を出さないためにも素早くやってくれればいいのにと悔しい思いだけが残った。

インターネットの普及で、確かにわたしたちの暮らしは便利になった。しかし、それと引き換えに大きなリスクを負うことにもなった。利便性が大きすぎて、その害を隠している。多くの人がそれに気づいてない、わたしだってそうだった。

これからのオンラインショッピングは、銀行振込やコンビニ決済だけにしようと決めた。自分のことは自分で守らないと酷い目に遭うから。

written by Yoshinobu Iriguchi