TBSの夕方のニュース、Nトクで「スマホ取込(奪取)詐欺」を観た。詐欺のパターンは昔と変わらないなと思いながら自分自身の苦い経験を思い出した。
まず、この詐欺の概要だが、低金利の貸金業を装って「どこからも借りられなくなった人」を狙う。端っから金を貸す気はないのだからサラ金の半分以下の金利を謳って客を引き付ける。
融資の申し込みをすると、非常に紳士的だが、日本語の使い方を知らなさそうな喋り方の担当者と名乗る男が対応する。程なく「100万円の融資枠が確保できました」と言う。この時点でオカシイと思わないのは、多分、資金繰りに行き詰っている人たちだからだろう。
「お客様(申込人のこと)はブラックリストに載ってますから、このままではご融資できません」と言われ、そのデータを削除するには、大手携帯電話会社で新規回線を3本契約して実績を作ってくれと。つまり、携帯電話会社の審査が通れば、それがブラックリストから削除する実績になるということらしい。冷静に考えればこんなことはあり得ない、でも低金利の100万円が魅力的だからとショップに飛び込んでしまう。ただ、申込人はショップではこのことを絶対に喋ってはいけないと口止めされ、あくまで「新規回線を契約しに来た」ということにしろと釘を刺される。無事に契約が完了したら、その新品のスマホ・携帯電話を私書箱宛に発送することを求められる。
取材スタッフはその警告を無視して携帯ショップでぶっちゃける。当然、ブラックリストからの削除なんてこともないし、携帯電話会社の審査は無関係とショップ店員から告げられる。
店を出るとすぐに「紳士的な貸金業者」から電話が入る。どこかで見張っているのかと思うほど絶妙のタイミング。やっぱり今回は止めることにすると告げると、彼らは本性を現す。汚い言葉で怒鳴りつけ、自宅まで押しかけると脅す。それが嫌だったらショップへ戻れと命令する。そこで取材である旨を告げると、当然のことながら彼らは電話を切る。
これまでどれだけの人が被害に遭ったのだろうか。場合によっては愚かな申込人が詐欺罪に問われることもある。その上、契約してしまった「3回線分の使用料と端末機器代」を最低でも2年間払い続けなければいけない。月々、まったく意味のない2万円超が申込人の財布から消える。
わたしが引っかかったのも同じパターンだった。新聞の折り込み広告にあった「低金利の貸金」に電話をかけた。「あなたはブラックリストに載ってるから、このままでは貸せない。そのデータを書き換えるために大手サラ金で20万円の借り入れを申し込んで審査を受け、その金を保証金として送れ」と。サラ金ではこの事情を話してはいけない、だから無人申込機で手続きをしろと言われてノコノコ出かけた。
ビクビクしながら無人機で申込をすると、無事に契約が完了してしまった。ここで「ブラックリストには載ってない」と気づけばよかったのだが、サラ金よりも安い金利と大きな融資枠に惑わされた。
無事に終わったことを連絡すると、郵便局へ行って「居宅払いの郵便為替」で送れと言う。これでもオカシイと思わないのだから奴らの口の巧さと己の愚かさに驚く。
翌日になって「これは詐欺なんじゃない?」と気づき地元の警察に相談に行ったが被害届を出しただけで終わった。高い授業料を払ったものだと諦めるしかなかった。
こんな詐欺をする奴らは許せないが、それに引っかかった自分の不甲斐無さが悔やまれる。同じ状況で引っかかる被害者が出ないように警戒するとともに、奴らを捕まえて欲しい。
こんな詐欺に引っかからないためには、世の中に「美味い話」はないのだと肝に銘じなければならない。
written by Yoshinobu Iriguchi