四国のバス会社のドライバーが懲戒解雇された。貸切バスの宿泊を伴う運行の際、社内規定に反して飲酒、ここまではよくある話だが、翌朝出発前のアルコール検知テストで「偽装」したのが理由らしい。ニュースでは熱帯魚や金魚を飼育する水槽で使うポンプが映ってた。この、所謂ブクブクでアルコール検知器に空気を送っていたのだろう。

わたしも以前、フリー契約のドライバーをしていた。その頃は禁酒規定があったのは大手バス会社の一部だけで、泊まり運行の際も「飲みすぎるんじゃないよ」の一言で済んでいた。また旅館でも夕食の時にドライバーとガイドには「一本付き」が当たり前だった。当時、わたしは自己規定で、「運行前12時間には飲酒しない」と決めていた。他のドライバーさんたちは結構深酒する人もいたが、多くの人命を預かるプライドを持って自制していた。

運行前夜の飲酒規制が広まる原因になったのは、JR高速バスの運転手が、こともあろうに運行中に飲酒していたのが発覚したからである。この時の機材は二階建てバスで、運転席と客席は完全に仕切られていた。乗客とまったく顔を合わさないことも可能である。ウーロン茶の容器に焼酎を入れてグビグビやっていたというから信じられない。彼にはプロとしての自覚が無かったのだろうか、多くの、自分の運転を信じていてくれる乗客の思いを裏切ることに躊躇いはなかったのか。

時々、新人運転手の教育・監査役としてお呼びがかかることがある。もちろん、運転操作に関しても指導をするが、心構えを教えることが多い。だから、たまに高速路線バスに乗客として乗ると、ドライバーの運転が気になって仕方ない。いやいや、今日のわたしは客なんだからと鎮めている。

アルコール検知器の偽装は一社だけなのだろうか?。中には飲酒衝動を抑えられないドライバーもいる。運行前夜は禁酒ということは、休日前夜しか飲めない。酒を断てない人は大型二種免許を返納するか、運転以外の職業に就くしかない。

今のわたしは、年に数度しか飲まないし、プロドライバーでもない。そろそろ大型二種免許の返納でもしようか。

written by Yoshinobu Iriguchi