昼時のTBS、東京品川区での道路計画についてのレポートを観た。戦後復興時の計画道路が蘇る、ゾンビのようなものだ。
焼野原だった東京の街を復興整備するための道路計画、今では多くの家が立ち並び、どうしてこのような計画が復活するのかが不可解である。

公共工事は止まらないとよく言われるが、この道路計画も同じ。当時は復興目的だったが、現在は「防災のため」だと目的が変更されている。正に止まらない公共工事の「定番手法」とも言える。その「ゾンビ計画」を、東京オリンピックが開催される年までに整備しようというのだから驚かされる。都道であるから、費用は都民の税金が、その建設に充てられる。

ムダな、害悪とも呼べる公共工事が、大手を振って強行される。わたしの実家近くでも「長良川河口堰」というムダな害悪が建設されると聞かされ、反対運動に参加した。カヌーの上からシュプレヒコールを飛ばした。止めることは出来ないと覚悟しながらも何もしないわけにはいかなかった。集団抗議が終わって接岸したとき、地元テレビ局からインタビューを受けた。水面を指さし、少しでも分かってもらおうと説明した。その夕方のニュースで13秒ほど放送され、翌日銀行屋から嫌味を言われた。あの地に於いてはお上に逆らう、わたしのような存在は異端児以外の何者でもなかった。長良川河口堰は、愛知・岐阜・三重の工業発展のために、水源を確保する目的で計画されたものだ。しかし、工業地帯でも技術の進化により、計画時のような水量を必要としなくなっていた。すると、愛知用水の水源にするのだと目的変更された。

今、実家の水道水は、長良川河口から取水された「汚水」を浄化して(消毒用の薬剤を大量に使って)供給されている。大阪の方には失礼だから、淀川よりももっと不味い水で、お茶も飲めやしない。実家の辺りでは「浄水器」が必需品になり、宅配の飲料水を利用するひとも「爆発的」に増えたと聞いた。同級生の中には、今になってわたしの主張が正しかったと認めてくれた人もいる。お上に逆らわないといけない時もあると、ようやく気付いたのだろう、ただ、もう手遅れではあるが。

民主党政権時に工事が停止した「八ッ場ダム」も復活した。源流に草津温泉をもつあの川を堰き止めたらどんなことが起きるのだろう。コンクリートは温泉水に弱い、それは温泉旅館の浴場がすぐに傷んでしまうのを見れば明らかである。日本工業規格でも「骨材(コンクリートを製造する際の砂利や砂)アルカリシリカ反応性試験」がある。温泉水を中和した水を大量に湛水した場合、コンクリートの劣化は免れない。そのムダなダムを崩壊させないように保守作業をするだけでも大変な費用がかかる。

土建屋によって経済活動を上向かせる手法は前時代的だと言える。クダラナイ道路計画やムダなダムにつぎ込む「税金」があるならば、困窮している人への支援に使ってもらいものである。

written by Yoshinobu Iriguchi