名医と呼ばれる人たちがテレビでほんの少しだけ「真実」を語った。この国の一般人は未だに医者はとっても偉い人で、何でも治してくれる神様のような存在だと思っている。

抗がん剤の場面では、ようやく「ホントのことが語られた」と安心した。わたしは常々、抗がん剤なんて使ったら死んでしまうと主張してきた。勿論、自分が癌を患っても使用を拒否すると心に決めている。そんなわたしの主張には殆どの人が反論する。刷り込みとは怖いものだと、その都度実感する。

そもそも、癌細胞と呼ばれているものは、こうして文章を書いている間でも、わたしの体内で発生している。抵抗力があるからこそ、この「悪性新生物」をやっつけられている。癌細胞の発生に対し、退治が間に合わなくなれば、奴らは増殖を始める。その特性によって罹患する部位が異なり、弱い部分で勢力を広げようとする。

日本人の癌罹患率、死亡者数が増えているのは、この道理がわかれば、当たり前のことだと分かるはずである。

つまり、以前は「人生50年」と言われるほど平均寿命が短かった。医学が進歩し、食生活が豊かになり、世界に誇れるほど寿命が延びた。歳をとれば、当然、抵抗力が弱くなる。それによって癌細胞を退治できなくなり、発症する。

「早期発見が大事で」と言われ、癌検診を受けさせようと国は躍起になっている。わたしは20年前まで検診業界に属していた。当時のわたしは洗脳されていた、役にも立たない検診を、さもありがたいもののように流布していた。あの頃に戻れるのなら、その言葉をすべて消し去りたい、いや、それ以前にそんな業界には足を踏み入れなかった。

今夜のテレビでも「バリウムを用いたレントゲン検査には見落としが多い」と言った医師がいた。当時のことだが、わたしの同僚は胃部検診車を運転して、検診の際には発泡剤(胃を膨らませる薬剤)とバリウムを受診者に飲ませる業務についていた。前夜から絶食、水分も取っていない受診者の中には、あまりの気持ち悪さからおう吐する人もいた。時として、そのおう吐されたものを頭からかぶることもあった。

こんな辛い検査を受けたにもかかわらず、見落としが多いのである。

検査では7枚の画像を撮る。放射線技師は検診車が車庫に戻った後、そのフィルムを現像し、読影まで行う。疑わしい影があれば付箋をつけて読影医に送る。一台の検診車で30人~40人の撮影を行う。一人7枚だから210枚~280枚の画像を見なければならない。見逃しが起こっても仕方がない状況だった。

ちなみに、わたしは一度もバリウムも内視鏡(胃カメラ)も飲んだことがない。人には絶対受けてくださいねと言いながらである。

番組の中では、医療費削減のための「メタボ検診」も無駄だと言われていた。まさにわたしの意見通りの展開に頷きながら観ていた。

早期発見の御旗の下にクスリ漬けにされ、医療費はとめどなく膨れ上がる。

住民健診や癌検診など、業界の「新規顧客獲得手段」以外の何物でもない。

ただ、ホントのことを知られると、抗がん剤利権や検診利権が消えてしまうので、彼は必死に愚論を展開するだろう。その彼らこそが、一番の「ガン」なのではないかと思う。彼らにこそ「抗がん剤」が使えないものだろうか、とも。

written by Yoshinobu Iriguchi