常磐道で高速路線バスと普通乗用車が正面衝突した。映像を見る限りオフセット衝突ではなく、真正面から当たっていたようだ。現場は片側一車線、とすれば、制限速度は70キロ、相対速度は140キロ。バスには強固なフレームがあるからあの程度で済んだのだろうが、普通自動車はボンネットが潜り込み、キャビンも潰れていた。
41名の乗客のうち、30名が搬送された。バスのシートベルトは一部の車種の最前列を除いて2点式、腰部に装着するタイプだから、上半身、特に顔面が前席にぶつかる可能性が高い。それを考慮して、バスの座席は衝撃をやわらげる構造になっているが、それでも入院中の乗客が居ることに驚いた。
航空機のシートベルトも腰部固定の2点式である。ただ、航空機の場合は衝撃が来るまである程度の猶予がある。訓練された客室乗務員が安全姿勢を連呼して乗客を守る。
それに対してバスの場合、衝撃は突然訪れる。乗務員がアナウンスする猶予などない、仮に猶予があるとすれば、その衝撃を回避できる。
どうして上半身も固定できるような3点式シートベルトが導入されないのか。
乗車中、窮屈であるとか、経費の問題とか。
わたしは、バスほど危険な乗り物は無いと思う。どんなに優秀な乗務員であろうと、不測の事態が起こる確率は高い。また他車に起因する事故に遭遇する可能性もある。
そんな危険な乗り物であるのに、乗客への安全対策が置き去りになっている。
今から30年ほど前、流行り始めたジープタイプのクルマに乗っていた。当時は後席シートベルトは2点式とされていた。その時代にあっても、北米向けは3点式が装備されていた。そのことを営業担当者に尋ねた、彼は日本国内はこれでいいのだと言った。確かに法的には問題無いのだろうが、安全性を考えればより厳しい基準を採用した方が良いに決まっている。
最近では高速バスに乗る機会が無くなったのが幸いだが、どうしても利用しなければならない場合は、キッチリとシートベルトを締めたい。それが最低限の自衛手段なのだから。
written by Yoshinobu Iriguchi