雑煮のような宗教観を持つこの国にあって、少しでもキリスト者らしくあろうと色々考える。とは言え転居を繰り返すうちに所属教会とも疎遠になり、聖日にあっても礼拝をサボり続けている。

クリスマスになると、この歳になってもワクワクする。

「サンタクロースって本当にいるの?」と定番の問いに「いるよ」と真顔で応える。

プレゼントを、真っ赤な衣装で配り歩く恰幅のいい老齢の男性だけがサンタクロースではない。商業ベースで作り上げられた偶像、「商品」という目に見えるモノではなく、目には見えないものこそがサンタクロース。

そう、サンタクロースは総てのひとの中にいる。ひとを思いやる心、見返りを期待せずひとを愛する心。それこそがサンタクロース。

もう20年以上も前のことだが、身体の不自由な子供たちを連れてクリスマスイヴの花火を見に行ったことがある。今年のような暖冬ではなく、時々雪が舞うような寒さの中で夜空に咲く大輪の花火を眺めた。その帰り道、寒さから逃れようと地下鉄に乗り込む、まるでラッシュアワーのような混雑の中、わたしたちは立っていた。目の前に座っていた、一見ヤンキー風のニイチャンがすっと席を立ち譲ってくれた。彼は「メリークリスマス」と言った。わたしはこのとき実感した、誰の心の中にもサンタクロースがいると。見た目はちょっとヤバそうなニイチャンだったが、彼の行動に目頭が熱くなった。

わたしの友人は「ベリー苦しみます」と言う。子供にプレゼントをせがまれて懐が寒くなるからだと。わたしにとっては悲しい言葉だが、あえて否定しない。そんなことを言ってはいても、プレゼントを渡した時の子供の笑顔を見ればワクワクするはずである。

わたし自身、一人で過ごすクリスマスにも慣れた。時折、寂しさも感じるが、わたしは一人ではないと思っている。目に見えないサンタクロースはわたしの中にもいる、主と共に歩めばどんな道でも進むことが出来ると確信しているから。

ひとは毎日の暮らしに幸福を感じることは少ない。常に上を目指すのは悪いことではない、向上心がなければ人間としての魅力もなくなってしまう。だが、物質的に上を目指し、それが叶わないから不幸だなどとは思ってほしくない。こうして日々の糧、暖かい住まいが与えられていることに感謝し、それこそが幸せなのだと感じることができれば、心はもっと穏やかになる。

クリスマスはわたしたち自身の中にいるサンタクロースを確認する日。いつの日もそれを忘れずに居られれば、この世界はもっとあたたかいものになる。

すべてのひとに。。。Merry Christmas !

written by Yoshinobu Iriguchi