パリでの無差別テロリズム、一番心をいためているのはムスリムの方たちではないかと思う。

ヒトは理解できないものに恐怖を感じる。

わたしもかつて、ムスリム(イスラム教信者)の人たちに対して恐怖と嫌悪を感じていた。それはわたしの周りに彼らが居なかったから。

わたしの行きつけのカレー専門店のオーナーはムスリムである。パキスタン人である彼の容姿は、テロリストとして報道されている男たちとかわらない。最初は店に入るのさえ躊躇われたが、何度か通ううちに様々な話をするようになり、車に同乗して出かけることもあった。彼の友人二人に囲まれて出かけた時には、このままどこかへ連れ去られるのではないかと、少しだけ不安になった。

ちなみに彼の妻は日本人、彼女もムスリムである。イスラムの教義によれば、他宗教との婚姻を認めていない。結婚するならイスラム教に改宗しなければならない。

この国では「信教の自由」が憲法で保障されている。わたしはキリスト者であり、それを堂々と表明できるのもありがたい。ムスリムの友人もわたしの宗教は尊重し、理解してくれている。お互いの信じるものを認めて干渉しなければ軋轢は生まれないはずである。彼のスマホからはお祈りの時間になると経典が流れる、アラビア語の経典で意味など分からないが、聞いていると穏やかな気持ちになる。

日本人は無宗教だとよく言われるが、わたしは個人の中の多宗教だと思う。初詣で神社へ、お寺へ墓参り、会社に神棚を飾り、家には仏壇があり読経する。ハロウィンで盛り上がり、クリスマスを楽しむ。

わたしは?。

初詣行かない、墓参りよりも故人の写真に祈りを捧げる。敬虔なクリスチャンであるとは到底言えない暮らしではあるが、毎朝の祈りだけは欠かしたことがない。

目には目を歯には歯を、互いに報復を繰り返していけば、悲しみと怒りが増大するだけである。

この星から無益な争いと殺戮が無くなる日が来る。この星に生きるすべての人が幸福を感じ、笑顔が溢れますように。

この大規模テロリズムで亡くなった方たちの御霊が安らかならんことを。

written by Yoshinobu Iriguchi