昨日はバレンタインデー、独り者のオッサンにチョコレートをあげようなどと慈悲に満ちた方など身近にいるはずもなく。この日本独特の、ガラパゴス的イベントにも動じなくなってきた、慣れとは恐ろしいものだ。

まだ真面目なサラリーマンだった頃、バレンタインデーはデスクの引き出しが義理チョコで賑やかになる日だった。日本中がバブル景気に踊り狂い、各支店の取りまとめをしていたわたしのところには社内便で華やかな包みがいっぱい届いた。端っから義理だと分かっているから、自宅へ持ち帰っても何ら疑われることなく、夫婦二人で楽しくいただいた。

その一か月後はお返しに四苦八苦。会社を抜け出して明治屋で山のように義理返し。それもまた楽しかった。確かに財布の中身はすり減ったが、家内に特別予算を組んでもらっていた。当時東京支店にいた後輩は、義理チョコのお返しにブランド物の宝飾品などを贈って顰蹙をかっていた。その女性社員から相談されたわたしは、返すのも可哀そうだから、要らなきゃ質屋にでも持っていけばとアドバイスしてた。

女性から男性へチョコレートを贈るのは日本独特で、台湾のお友達からは一度も貰ったことがない。

どうして?って聞いたら、逆にわたしが何も贈らないことを責められた。

日本のチョコレート屋さんが考え出した伝統なんだからと納得した。

高校生だった頃、期待に胸膨らませて下駄箱をのぞいたこともあったが、その中に一度もチョコレートが入っていたことはなかった。汗臭いデブだったわたしには当然のことかもしれないが、哀しい思い出。貰ったチョコレートの数を自慢する同級生が羨ましくて仕方なかった。

最近は義理チョコも減ったと聞く。まして今年は日曜日に当たってしまって、業界には厳しい年だったかもしれない。

さて、スーパー行って、売れ残りのチョコでも買ってみますか。

written by Yoshinobu Iriguchi