「ため息をつくと幸せが逃げる」とはよく言ったもので、今日、友人と半日ほど過ごしてあたらめて実感した。いくら忙しくても暮らしが楽にならないと、石川啄木が綴ったようなことを呟いていた。わたしは相変わらず、裕福とは言えない暮らしをしているが、じっと手を見ることはしない。金銭的には豊かでなくても、毎日ご飯が食べられる、暖かい寝床がある、こうして好きなことを書いていられる。それだけで十分幸せだと思っている。
所詮、オッサンの一人暮らし、凝った料理を作っても張り合いがないし、オイシイものでも食べていられればそれでいい。
午後、行きつけのインドカレー屋で半月ほどまえに名刺交換した妙齢の女性と再会した。閉店時間を過ぎても、店のスタッフを交えて話し込んだ。彼女も同じようなことを言った、仕事も日常生活もまるで違う方だったが、その話はとても興味深いものだった。一人デスクで黙々と仕事をする日が続いていたせいか、素晴らしい気晴らしになった。同行した友人は気後れして殆ど発言が無かった、ニュートラルなわたしは臆することなく話を盛り上げる。人見知りで口下手だと思っていたが、歳とともに図々しくなってきたのだろうか。
わたしはため息をつかない、やっぱり、毎日楽しく生きていたいから。
前向きに生きていれば、何かいいことが起こりそうな気がするから。
written by Yoshinobu Iriguchi