テレビ東京の番組に見入っている。コンクリート建造物、団地が解体される光景が悲しい。内装を取り払われた室内、この頃は「マトモなコンクリート」が使われているなんて少し違って視点で観る。
わたしの実家は愛知県、自宅の近くに大手製鉄会社の大規模社宅団地が建設された。山が崩され、次々に5階建ての建物が出来た。工事途中の建物に忍び込んだことがある。当時は今ほどセキュリティが徹底されてなくて、子供のわたしでも容易に侵入できた。
初めて見た様式便器に驚き、里山の中の5階という高さに目を見張った。自宅は平屋で階段をのぼって家へ入るのにも憬れた。ほどなく多くの家族が引っ越してきて、スーパーが作られ、その階上にあったそろばん塾にわたしは通っていた。校区が違う人たちと触れ合う、日本全国から来ていた塾生たちとの交流の中で引っ込み思案だったわたしは変わった。ここで出来た友人たちとは中学で同級生になり、今でも付き合いが続いている。そろばん塾の授業が始まる時間の前、よく買い食いをした。初代仮面ライダーが流行っていた、カード欲しさに箱買いする友達が菓子を配っていた。その菓子をわたしたちは喜んで食べていた。仮面ライダーにもカードにも興味はなかった。インスタントラーメンを袋のまま砕いて、粉末スープをシャカシャカして食べることも覚えた。そろばん塾はわたしに多くのことを教えてくれた。
あの頃のニッポンには今より活気があったと思う。わたしたちは子供だったが、大人たちももっとワクワクしていた。今では様々な電気製品に囲まれ、利便性は格段に向上したが、モノを手に入れた時の満足感はあの頃の方があったような気がする。あのワクワクするようなニッポンを再び感じられる日が来るのだろうか。
written by Yoshinobu Iriguchi