5年前、東北を襲った震災につづき、九州でも多くの人が被害に遭った。関東に住むわたしたちも忘れかけていた地震への備えをあらためて考えた。

国の耐震基準は大規模災害が起こる度に引き上げられる。しかし、自然の力の前では、わたしたちがいかに無力であるかを思い知らされる。

九州は比較的地震のリスクが小さいと考えられてきた。これは損害保険の「地震保険料率」をみてもわかる。料率が低いということは、保険料が安いことを意味する。それ故、今回の熊本地震の被災者の中には、地震保険を掛けていた人も少ないのではないかと思う。

壊れてしまった家のローンに加え、建て直すために借金を背負う。その二重ローンに苦しむ人が多くなりそうな予感もする。

日本の標準的な家は、木材の柱を用い、壁耐力を高めるために筋交いを入れる。屋根材は、少なくなったとは言え、重量のある瓦を使う。地震の多い「火山列島」にあって、このような工法が長年続いてきたことも疑問だが、決して揺れに強い建物とは言えない。まして今回の九州のように複数回にわたって激しい揺れに遭えば、柱を接合している金具が緩んでしまうことも考えられる。

かつて、わたしも家を建てたことがある。当時住んでいた山奥の村に、地元の大工に文句を言われながら「ベニヤの家」を建てた。大手ハウスメーカーに依頼し、深い根ほりの、土木工事並みの基礎、工事担当者からは、山崩れに遭っても、この形のままで滑っていくと冗談を言われたほどだった。

今は賃貸住宅に暮らしている。どれだけ家賃を払おうとも、永遠に自分のものにはならないが、ノマドな心のわたしにはこの生き方が合っている。住宅ローンに苦しむことなく、建物が傷めば管理会社に電話するだけでいい。それ故近所の方々とも軽い付き合いで済んでいるし、気に入った街があればそこへ引っ越せばいい。

しかし、耐震性という面では、コストを削って建てられた賃貸住宅には不安がある。

では、どんな建物がいいのか。

しっかりした基礎の上に、可能な限り軽量なものを建てる。

随分前に一度だけ展示場で見たことがある「ポリスチレン製のドームハウス」。

つい最近、テレビでも紹介されていたが、簡単に言えば「発泡スチロールの家」である。

躯体(壁)に断熱、遮音性に優れた発泡スチロールを使う。その組み立てはとても簡単で、2日もあれば躯体が完成する。モルタルで外側を施工して家が完成するのだが、その重量はどんな工法よりも軽い。

展示場は小松空港の近くにあったが、離陸する飛行機のエンジン音も気にならないほどの遮音性に驚かされた。楽器演奏を趣味とする人にもいいかもしれない。

地盤調査をしっかり行って、大げさなほどの基礎の上にドームハウスを建てれば、地震も気にならないかもしれない。ただ、地震による建物への歪から、外部モルタルにヒビが入る心配は否めないが。

ノマドなわたしには定住は似合わない、最良の選択肢は「分譲賃貸の集合住宅」かもしれない。

written by Yoshinobu Iriguchi