軽井沢の悲惨な事故の陰に隠れた感のある蒲田でのバス事故。テレビ朝日が昼の番組で掘り下げていた。これまで報じられなかったことが続々出てきた。
「バス業界の闇」と表現されるが、まさにその通りだと思う。
小泉規制緩和で雨後の筍のように増え、メジャーな存在となった小規模バス業者。その前身は、ほとんどが「違法な白バス屋」や「違法スレスレのレンタカー屋」だったりする。それまでは行政の取り締まりにビクビクしながら運行していた「バス屋」が「印籠を手に」走れるようになった。
国土交通省から「お墨付き」を貰ってはいるが、その運営はまさに「バス屋」のまま。
わたしも以前は数社の「バス屋」にフリーのドライバーとしてお世話になっていた。今だから言えるが、健康診断など一度も受けたことがない、適性検査にいたっては話題にすらのぼらなかった。
実車(乗客を乗せた状態)の前にテストされたのは一社だけ。それも田舎道を30分ほど走っただけで終わった。大型二種免許保持者ではあったが、はっきり言って「ペーパー二種」。旅館の送迎でウロウロしたことはあったが、正式な営業運行はしたことはなかったと言うのにだ。
「バス屋」は常に人手不足状態で運転手の出入りも多い。大手では勤まらない「個性的な人間」が多く、ちょっとしたモメゴトなど日常茶飯事。そんな「バス屋」は互いのネットワークを持っていて、機材が足りない時などは「代車」と称して仕事をまわす。運転手もそんなネットワークでリクルートされる。
「乗れるよね」って聞かれただけでいきなりの運行も珍しくない。
バス屋の中で養成するなんて余裕はない。
件の運転手、糖尿病性網膜症を患っていたらしい。右目の視力を殆ど失った状態での営業運行。常識では信じられない事態が発覚した。雇用主は健康診断を実施し、医師の所見も問題が無かったと言い張っているが、この状態で所見無しとしたならば、その医師の免許を取り消すべきである。12メートルもの巨体を操作するのは片目では無理なのだから。
この「恐ろしい事態」を解消するには、
厳格な健康診断と適正試験を課すべきである。
航空機のパイロットには「航空身体検査」が義務付けられている。航空機は一度事故を起こせば、その被害が甚大であるとの認識のもと、高いハードルが設けられているのと同時に、コクピットでは2名のパイロットが操作にあたっている。だから事故が少ないのだが、バスは地上を走っているという慢心のもと、ハードルが低すぎ、事故が頻発する。
バス業界の闇を払拭するには、
バス運行のためのハードルを上げることである。
それによってバス台数が減ることになっても仕方ない。
台数が減れば運賃が上がる。
運賃が上がれば人件費や整備費に充てられる。
そうすれば志望者も増え、人手不足も解消するはずである。
利用者の方にも認識をあらためて欲しい。
安くて安全なものなどない。安全を確保するためにはコストがかかる。
命がほしければ、安すぎるバスツアーに参加しないことである。
written by Yoshinobu Iriguchi