軽井沢バス転落事故の原因がほぼ特定された。直前の最高速度が100キロだった、ギアがニュートラルに入っていたとかされているが、どちらも常識では「ありえない」状況だ。

下り坂でギアを抜く(ニュートラルにする)行為は、もう何十年も前のクルマではやっている人が多かった。キャブレターを使ったエンジンであれば、回転数を低くするほど燃料の消費は少なくなる。しかし、今ではアクセルペダルから足を離した状態で、所謂エンジンブレーキが効いた状態であれば、燃料供給がカットされる。ニュートラルでアイドリングしているよりも消費量が少ない。

では、ギアがニュートラルになっていたのはなぜか。元バスドライバーの友人と話し合ったが、わたしも彼も同じ見解だった。

まず、このブログでも最初から書いてきたように

1.下り始めるときの速度が速すぎた。

2.その際に「5速」を使用していた(この機材は6速変速)。

3.8%勾配の下りで速度が増していった。

4.慌てて「4速」に入れようとしたが速度が速すぎて入らなかった(エンジン保護機能が働いた)。

5.フットブレーキを試みたが効き目は殆ど無かった。

警察の検証結果によれば上記の筋書きが成り立つ。

飛行機に例えるなら、「きりもみ状態で急降下」しているようなものである。この状況では、わたしでも立て直す自信がない。

小型バスと大型バスでは、単発プロペラ機とB747クラスのジェット機ほどの差がある。その慣れないジャンボ機で積乱雲に突っ込んだようなものである。ハンドルを握っていた運転手に一番の責任があるのだろうが、同乗していたもう一人の運転手の指導責任も問われる。

道を知らない、大型機材に不慣れな運転手に実車運転させる以上、ガイド席(運転席の左側)に陣取って指導するのが当たり前である。上里サービスエリアで休憩していれば、事故地点まで約1時間、交代後の仮眠に入っていたかのかもしれない。

バス交通はこれからも必要とされる。貸切運行も同じである。

ならば

飛行機のように「すべての車両を管制する仕組み」が必要ではないだろうか。

一部、大手のバス会社ではGPS機能を利用して自社機材の所在地と状態を把握している。

これをすべてのバスに拡大する。

同時に運転手の状態も把握できるように、異常運転が感知された場合には速やかに処置がとれるようにする。

規制緩和で雨後の筍のように小規模バス会社が誕生した。その中には「白バス屋」や「レンタカー屋」が合法的に運行するために設立したところも多い。えてしてこのような会社では安全管理や労務管理がいい加減である。名義貸しをしている会社もある。名義貸しとは、運転手が自分でバスを用意し、営業用ナンバーを取得するために、あたかもその会社の機材であるかのように偽装することである。自前の機材であるから、他の運転手が乗務することはない。忙しくなればその機材の持ち主が連続して乗務することになる。運転日報も点呼簿も偽造、当然、他の書類も推して知るべしである。

運行管制を徹底し、この設備を導入出来ないような会社は運行停止にし、廃業に追い込めばいい。それでバス運賃が「適価」になれば、運転手の待遇と乗客の安全が担保される。

バスと飛行機は、多くの命を運んでいるという意味で同じである。

人の命は地球より重いとの言葉通り、費用がかかっても対策を取ることが急務ではないだろうか。

written by Yoshinobu Iriguchi