NHKスペシャルに見入ってしまった。介護危機と銘打っている割には明るい構成だった。しかし、現実は危機というよりも破綻状態なことに多くの人は気づいていない。

わたしも最近まで気にしていなかったが、ふと、このまま老いていったらどうなるのかと怖くなる。以前、「無届け介護ハウス」でも書いたが、誰でも歳をとり、身の回りのこともできなくなる。三世代同居の時代ならいざ知らず、独居高齢者がどんどん増えている現実。これを直視したくないと誰しも思う。自分がその場面に出くわすのは遥か先のことだと思いたい。

番組の中で「介護男子」なる若い人たちが出ていた。介護という現場にも若い男性が増え、それにひかれてこの職を目指す人も増えるかもしれない。確かに現場に入れば面白く、ヤリガイのある仕事なのかもしれないが、賃金の安さ、拘束時間の長さ、身体への負担の大きさを考えると離職者が多いのも頷ける。

今、わたしの友人が「訪問介護ステーション」を開設しようと計画している。ここ3年ほど介護タクシー会社を経営していて、多角化を目指すらしい。わたしもアドバイザーという立場で参加しているが、中々ハードルが高い。事務所や店舗をなどハード面は金を用意すれば問題ないのだが、実際に業務に携わる人たちが集まらない。番組の中でも施設を経営している人が言っていたが求人広告を出しても反応が薄いと。面接まで漕ぎつけるのは至難の業、そこで不採用にするだけの余裕がなくて、応募者の資質に関係なく採用するしかないのが現実だと。

どうすればこの介護危機を乗り越えられるのか。

まずは実際に現場で頑張っている人たちの処遇を改善する。それによって離職者を減らし、潜在者(資格を持っていても就業していないひと)を掘り起こす。職員数が増えれば労働時間を短くすることも出来る。ただ、それには大幅な公金を投入しなければならないが。公共工事でゼネコンを太らすのもいいが、老いてゆく国民を置いていかないでほしい。

もう待ったなしの介護危機、早く手を打たないと取り返しのつかないことになる。

written by Yoshinobu Iriguchi